『礎石が語る浪漫 ― 全国の国分寺跡を訪ねて ―』
砂川宣夫著 1700円(税別)四六判398頁
奈良天平時代(8世紀中頃)、天災や疾病により日本全国は大きな被害を受けていた。時の聖武天皇は仏の加護によって国を守ろうと願い、国内六十八カ所に国分寺と国分尼寺を建立、また、総国分寺として大仏で知られる東大寺が建てられた。しかし、今日では遺跡として礎石が残るのみで所在不明の国分寺もある。
著者の宝塚市在住・砂川宣夫氏は、10年以上をかけて、全ての国分寺遺跡に足を運び、その歴史を辿り、併せて紀行文も交え、400頁近いボリュームのある一冊にまとめた。
「遺跡は、もとより現地に立っても、無言、沈黙したままであるが、悠久のむかしから変わらぬ自然の風景と国の華として栄えた国分寺跡の礎石群を目の当たりにすると、トンネルを抜けて違う風景に出くわす衝動にも似た感動を覚える(著者)」と述べている。
歴史や旅行好きな人にとって楽しく、読み応えのある一冊だが、国分寺・国分尼寺の経緯・背景を詳細にまとめた歴史資料としての価値も高い。